ダンス日記

 

先天性の運動音痴でありながら,音楽にあわせて身体を動かすことは嫌いじゃなかったえつこさんは,割りと高齢な方ばかりがやっている社交ダンスをならい始めました.

 「年寄りがすいすいできるんですもの,私のような運動音痴でもできるはず」と思ったんだよねえ...

 それは友人の「今度社交ダンスをはじめようかと思って.海外にいくと社交ダンス位できないとつまらないもの」という一言から始まったのでありました.

「海外に行ったら社交ダンスくらい出来ないとだめらしいよ」と夫に話してみると意外や意外。「一緒に習ってみよう」と言うではありませんか.社交ダンスは教養の一つだし運動不足解消になるので,一緒に習ってみようというのです.

 お世辞だと「まあ,モデルさんみたいね」といわれるプロポーション(背が高いのじゃ!)を持つえつこさんの社交ダンスに対する危惧は相手に苦労すると言うものでした.夫さえいつも相手になってくれれば問題ないだろうと思ったので,先天性の運動音痴でありながら,音楽にあわせて身体を動かすことは嫌いじゃなかったえつこさんは,習うことにしたのです.「年寄りがすいすいできるんですもの,私のような運動音痴でもできるはず」と思ったしね...

 さて,教室を決め申し込みをしましょう,という段階になった時NHKテレビで昨今の社交ダンスブームを取上げた番組が放映されたので夫と二人で見ました.ラテンダンスの競技会に挑む夫婦のドキュメンタリーでした.

 それを見た夫いわく「こんなに難しいこと,出来ないよお〜」

 これを機に夫の口から『社交ダンス』という言葉は消えてしまいました..

「え〜,それはないよお〜!」

 結構やる気になっていたえつこさんは思いました.

でも,これで習うのをやめたらしゃくなので一人で習うことを決意したわけ.

以下,私のダンス日記です.


1996(平成8)年4月:

 札幌は琴似本通りに面した「Mダンス教室」と書かれた看板のあるビルを入ると,かすかに軽快なタンゴのリズムが聞こえ,教室の扉を開けるとそれは大音響になりました.ちょうど個人レッスンの時間で女性の生徒さんと先生(以降M先生)が踊っていたところでした.広々とした教室内は全面板張りの床で壁は一面は全面窓,二面びっしりと鏡張りで,教室に入った瞬間ちょっと異空間に入ったような錯覚を覚えます.

 女性の先生(以降T子先生)が受け付けてくださり,レッスンのシステム,月謝等の説明をざっとしてくださいました.「自由に見学して結構ですよ.」とのお言葉に少しゆっくり見学することにしたえつこさんは教室内のソファにどっかりと座り込みT子先生が入れてくださったコーヒーを飲みながらレッスンを眺めることにしました.

 教室内には先生お二人とレッスン中の生徒さんとレッスンを待っている生徒さん数人がいました.生徒さん達の服装はTシャツにフレアースカート,ダンスシューズ.ダンスシューズはかなり履きこんでいる感じでダンスに対する入れこみようが伝わってくるようでした.その時教室内にいた生徒さん達は30代後半から40代の方と若い人が多く,巷で聞くお年寄りのサロン的存在のダンス教室という雰囲気とはちょっと違った感じでした.

 レッスンは個人差があるようですがワルツから始まり,タンゴ,クイックステップ,ラテンへと行くようです.かなり上手な人だとクイックステップで足馴らしをする人もいました.

 決まったワンフレーズのステップさえ覚えてしまえば,フォークダンスのように延々と踊り続けられる,と社交ダンスをなめていたえつこさんは,次から次へと変化するバリエーションの連続に,結構覚えるまでが大変,それどころか本当に自分で覚えられるのか不安になってしまいました.「本当にお年寄りでも踊れるの??」

 えつこさんの不安がかなり高まってきた頃,なんと,T先生が「ちょっと踊ってみないか?」とおっしゃる.貸し靴があるので履いてみて,といわれ勧められるままにヒールの高さが7センチもあるダンスシューズを履くと,普段ローファーしか履かないえつこさんはよろけそうになってしまいました.歩く姿は酔っぱらいの如く千鳥足で,立つだけで精一杯.173センチもあるえつこさんはダンスシューズを履くと180センチの大女になってしまうのでした.「これで踊れるのだろうか...!!」

 フロアの中心によろけそうになりながら行き,ステップを教えてもらいました.ゆっくりとした明るい曲にあわせてちょっと踊ってみると結構いい感じ!!えつこさんはこの感覚がたまらなく良くてやめないでいるようです..

 「これがブルースっていうんだよ」とM先生.ブルース?ブルースって確か淡谷ノリ子が歌っているような暗めの曲でなかったっけ...?なんか違うような気が...まあいいか.

 サークルレッスンを受けることに決めたえつこさんは,サークルレッスンのある日にあらためていきT子先生の「見学するならレッスンに参加してみてください」との言葉に,見学だけするつもりがダンスシューズを借り,参加してしまい,その日のうちに入会してしましました.(今思えばあっという間だったなあ...とえつこさんは振り返る)

社交ダンスシューズはヒールが7センチもある

社交ダンスのブルースは明るく和やかな音楽である

ダンス中,相手と手をつなぐのはかなり恥ずかしい


1996(平成8)年5月:

 なんとなくサークルの人達と馴染んできました.えつこさんの入っているサークルは初級です.今月はモダンがタンゴ,ラテンがチャチャチャです.

 初級サークルの方は男性4人女性3人と小数で先生の目が隅々まで行き届き組み方から足の運び方まできちんと教えていただけます.

 まず,ワルツは男女組まずに先生の踊る通りに踊りステップを覚えます.(覚えるはずなんだけどねえ...うまくいかないんだよね)だいたい覚えたところで男女組み先生のカウント通りに踊ります.(まだ,音楽にあわせては踊らない!!)もちろん,一番覚えが悪いのはえつこさんであります.

 次にラテンはウォーキングから始まり,次にバリエーションと続きます.男性はあまり動きが無いのですが,女性は回転したり左右に移動したりと動きがあって覚えるのが大変です.それに加えてえつこさんの場合,ハイヒールにまだ慣れておらず,おっかなびっくりやっているものだからますます大変です.自分用の貸し靴よりやわやかめの靴を買ったので当初より楽にはなったのですが...

 けれども,足首をくじきそうになるのでレッスン前後の足首のストレッチは欠かせません.えつこさんだけです.こんなことをやっているのは...他の方はウォームアップやクールダウンなんかと無縁でさっさと始めさっさと終わらせます.(これがえつこさんの自己嫌悪の素になるのだった...)

ウォーミングアップをしないでダンスシューズを履くと捻挫する

優雅にみえるダンスの練習に必要なのは根性である


1996(平成8)年6月:

 ダンスを初めてようやく3ヶ月目,えつこさんはやっとダンスシューズに足が慣れてきたようです.当初の千鳥足は無くなりました.まあ,ちょっとは動けるようになったようで,いっちょまえにダンスの後に汗をかくようになりました.

 今月は4月と同じワルツとルンバです.2回目だから少しは覚えるだろうと鷹をくくって挑んだえつこさんですが,相変わらずステップが身体にも頭にも入っていないようで,相手の足を踏んだり,強引に引っ張りまわしたりしてしまいます.おまけに相手に身体ごと突っ張りをかけてしまうので,ダンスの練習をしているのか相撲の稽古をしているのか解らないほどです.

 「右に行け」といわれても頭に血が昇っていて右も左も分からず,何がなんだか解らない状態.もちろん,聞きなれているはずの音楽のリズムも全く耳に入ってきません.

 前途多難のえつこさんでありました...

右足の次に動かすのは必ず左足である

ダンスは考えるより慣れろである

気合を入れるより落ち着くべし

1996(平成8)年7月:

 当初苦労したダンスシューズのハイヒールにも慣れました.ハイヒールに足が馴染んできたようでウォーミングアップのストレッチもそんなに必要でなくなりました.幅が5センチもあるゴムのベルトを買い込み格好だけはダンスらしくなってきました.

 今月は5月と同じタンゴとチャチャチャです.メンバーの入れ代わりが無いのでバリエーションのかなり先まで進みました.おかげで相変わらずてんてこ舞いのえつこさんです.どちらかというとラテンのほうが好きになってきたえつこさん,チャチャチャは結構余裕が出てきました.でも,足が動けばいいと言うものではなく,腕の動き,上半身の張り方,足の爪先,かかとの使い方などと限りなく次の課題が出てくるのです.ひたすら永遠の追求です.恐ろしい世界に足を踏み込んだものです.

同じように踊っているはずなのに先生と全く違う踊りなのはなぜ?

猫背はかなり解消されてきた

1996(平成8)年8月:

 ダンスを習い始めて4ヶ月が過ぎ,えつこさんはようやく「ダンスをしたあと汗をかくようになりましたね.」とT子先生にいわれる様になりました.これまではステップを踏むことに頭がいっぱいで気疲ればかりしていましたが,身体の方は余り動いていなかったため,運動らしい運動にはなっていなかったようです.

 ステップを身体で覚えるように(頭で考えなくても足が動く状態)なってきましたので,M先生から「前進する時はかかとから着地,後進する時は爪先から着地してね.それと,ステップの歩幅を大きくしなさい.あなたの背が高く足が長くても私はらくらくついていけるんだから.」とアドバイスが...

 いわれたとおりしようとすると,また,バランスが崩れてよろけてしまいました.「何で女性はハイヒールなのお!」とまた,7センチのハイヒールのダンスシューズが恨めしくなってきた悦子さんでした.

社交ダンスは汗をかくスポーツである

ステップの着地の時は爪先をのばさない

1996(平成8)年9月:

 学生時代に膝をひねってしまってからたま〜になんとなく膝がかったるくなるえつこさんは,ダンスシューズを履くとバランスが崩れてしまい,古傷がうずく様になってきました.「困ったなあ〜」

 T子先生は雑談を交えながらいろいろとダンスについてのアドバイスしてくださいます.ダンスシューズのサイズの話が出たときの話です.

 T子先生のダンスシューズのサイズは普段履いている靴よりサイズが大きめなのだそうです.というのは靴の中で足の指が動かせるようにだそうです.床を足の指でぐいっ,とつかむ様にするためだとか.先生が東京の先生のところで研修に行った折りいただいたアドバイスだそうです.

 「なるほど...」とえつこさんは先生のまねをして指でぐいっ,と床を押し付けるように立って歩いてみました.すると,なんとなくうずいていた膝の痛みが軽くなるような気がしました.

 「あ,これだ!」えつこさんは思いました.「自分は膝に体重をかけるような歩き方をしていたんだ.だから膝がうずいていたんだ.」と.

社交ダンスはよくない足癖を治してくれる!

1996(平成8)年12月: 

 秋に入り仕事が忙しくなってしまったえつこさんはレッスンをしばらく休んでしまいました.およそ3カ月ぶりにレッスンを再開しましたが,体がなまって思うようにいきませんでした.

 まずダンスシューズがはけなくなっていました.普段はローヒールばかはいているためハイヒールを履くための筋肉が衰えてしまい久しぶりにダンスシューズを履くとよろけそうになってしまうのです.

 さらに背筋を伸ばせなくなってしまいシャドウを組むと背中が重いのです.モダンの時は二の腕を直角に持ち上げたままの動きが多いので肩がだるくなりってしまいます.そしてとどめはラテンを踊ると息が上がってしまうのです.レッスンの回を重ねるごとにすこしづつ踊りが増えていったので気が付きませんでしたが,結構な運動量になっていたようです.(そういえば休んでいる間太ったし...)

 チャチャチャの4拍目の3連符のステップは荒くなってしまいました.

 これからもとのコンディションに戻すことと踊りの勘を取り戻すことが待っていると思うとまた前途が真っ暗になってしまったえつこさんでありました...

レッスンは休まないほうが良い(当たり前ですね...)

ダンススクール主催ダンスパーティに参加してきました


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